現場でよく見るピリオダイゼーションの失敗パターン7選|あなたの期分け、大丈夫?
ピリオダイゼーションの理論を勉強し、年間計画を組み、実行に移す。
ここまでできているコーチは多い。でも、「計画はあるのに、なぜか結果が出ない」というケースも少なくない。
原因は多くの場合、理論の理解不足ではなく、実装段階での「あるある」な失敗パターンにはまっていることだ。
僕自身も何年もかけてこれらの失敗を経験し、修正してきた。この記事では、現場で実際によく見る(そして僕自身もやってきた)ピリオダイゼーションの失敗パターンを7つ紹介する。
一つでも心当たりがあれば、改善のヒントになるはずだ。
失敗①:準備期が短すぎる
最も多い失敗がこれだ。
試合スケジュールが決まり、逆算してみると準備期が4〜5週間しか取れない。「まぁなんとかなるだろう」で突き進むと、GPPもSPPも中途半端なまま試合期に入ることになる。
準備期は体力の「天井」を決めるフェーズだ。ここが短いと、天井が低いまま試合期に入る。試合期のS&Cは「維持」が目的だから、低い天井を維持し続けるだけになる。
対策 年間計画を組むとき、準備期の長さは最初に確保する。試合スケジュールが判明した段階で、準備期に最低8週間(理想は12週間以上)を確保できるかを最初に確認する。足りなければ、移行期を短縮するか、シーズン初期の試合のピーキングを諦めるか、何かしらの優先順位の判断が必要になる。
失敗②:ディローディングを入れない(入れ忘れる)
「計画にディローディングは入れてるんですけど、実際にはスキップしちゃうんですよね」——これは本当によく聞く。
理由は大体同じだ。「まだ追い込めそう」「選手の調子が良い」「試合が近いから休んでる場合じゃない」。
でも、ディローディングをスキップし続けた先にあるのは、予定外のパフォーマンス低下か怪我だ。蓄積疲労は選手本人も自覚しにくい。「調子が良い」と感じていても、内部的には疲労が蓄積している可能性がある。
対策 ディローディングは「調子が悪くなったら入れるもの」ではなく、「最初から計画に入れておくもの」。年間計画上に配置して、原則として動かさない。3:1(3週ローディング、1週ディローディング)のリズムを基本形として先に決めてしまう。
失敗③:試合期にS&Cをやめてしまう
試合が始まると、S&Cトレーニングが後回しになる。競技練習と試合が優先され、ウエイトルームに行く時間がなくなる。気づけば数週間S&Cゼロの状態が続く。
準備期に何ヶ月もかけて積み上げた筋力やパワーは、刺激がなくなると2〜3週間で低下が始まる。シーズン終盤にパフォーマンスが落ちるのは、疲労だけが原因ではない。
対策 試合期のS&Cは「少なく、でも重く」。ボリュームは40〜60%に落としていいが、強度は維持する。週1〜2回、30〜40分のセッションで十分。試合日から48〜72時間以上空けて配置する。年間計画の段階で、試合期のS&Cセッションを明示的に配置しておく。
失敗④:テーパリングで強度も落としてしまう
テーパリングの目的を「休むこと」と誤解しているケースだ。
テーパリングは蓄積疲労を抜くフェーズだが、それはボリュームを落とすことで実現する。強度(使用重量)まで落としてしまうと、神経系の活性が低下し、試合当日に高い力発揮ができなくなる。
「テーパリング中だから軽い重量で」は、良かれと思ってやっているが、実は逆効果だ。
対策 テーパリングの原則を明確にしておく。ボリュームは40〜60%削減、強度は維持(場合によってはわずかに上げる)、頻度は大きく変えない。この3変数の操作を間違えないこと。
失敗⑤:全選手に同じ計画を当てはめる
チーム全員に同じメゾサイクル構成、同じ強度設定、同じディローディングタイミングを適用する。管理する側は楽だが、選手一人ひとりの状態に合っていない。
レギュラーとサブでは試合からの回復負荷が違う。怪我明けの選手は別タイムラインが必要だ。トレーニング歴の異なる選手に同じ%1RMを設定しても、実際の負荷感は人によってまったく違う。
対策 「全員フルカスタム」は非現実的なので、3〜4パターンのテンプレートを作り、選手をグループ分けして当てはめる。そこから個別の微調整を加える。完璧な個別化より、管理可能な範囲での最適化を目指す。
失敗⑥:計画を作ったまま見なくなる
シーズン冒頭に時間をかけて年間計画を作る。しかし、シーズンが始まると日々のセッション管理に追われて、年間計画を見返さなくなる。
3ヶ月後、「あれ、元の計画ってどうだったっけ」と開いてみると、実際のトレーニングとはかけ離れている。計画は計画のまま放置され、実行は実行で場当たり的に進んでいる。
対策 年間計画は「作って終わり」ではなく、毎週確認して修正するもの。週の始めに5分だけ年間計画を開いて、「今週はどのフェーズで、来週からどう変わるか」を確認する習慣をつける。この5分が、計画と実行のギャップを防ぐ。
修正が面倒すぎるツール(Excelのセル修正など)を使っていると、この習慣が続かない。修正コストが低い環境を整えることが先決だ。
失敗⑦:振り返りをしない
シーズンが終わった瞬間、「やっと終わった」で次のシーズンの計画に移ってしまう。今シーズンの期分けが計画通りに機能したのか、どこに改善点があったのかを検証しない。
振り返りがなければ、翌シーズンも同じ設計で同じ失敗を繰り返すリスクが高い。準備期の長さは適切だったか、テーパリングのタイミングは合っていたか、ディローディングの配置に問題はなかったか——これらは振り返りの中でしか見えてこない。
対策 シーズン終了後、移行期に入る前に、期分けの振り返りを行う。元の計画と実際の実行を照合し、テスト結果の推移と合わせて改善点を洗い出す。このデータを翌シーズンの計画に反映する。振り返りのクオリティは、計画が「形として残っているかどうか」に依存する。
7つの失敗に共通する根本原因
ここまで読んで気づいた人もいるかもしれないが、7つの失敗の多くは「計画が管理できていない」ことに起因している。
準備期が短くなるのは、最初の段階で全体を俯瞰できていないから。ディローディングをスキップするのは、計画上の配置が見えにくいから。試合期にS&Cが消えるのは、計画上に配置されていないから。振り返りができないのは、計画が形として残っていないから。
つまり、ピリオダイゼーションの失敗の多くは、知識や経験の問題ではなく、管理ツールとシステムの問題だ。
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