筋肥大・最大筋力・パワー・筋持久力|目的別トレーニング変数の設定ガイド
「今日のトレーニング、何レップの何セットにすればいいですか?」
S&Cコーチをしていて、選手からもっとも多く受ける質問のひとつだ。
答えは、「目的による」。
筋肥大を狙うのか、最大筋力を伸ばしたいのか、パワー(爆発的な力発揮)を高めたいのか、筋持久力を鍛えたいのか。目的が変われば、設定すべき変数——重量、レップ数、セット数、セット間の休息時間——はすべて変わる。
ピリオダイゼーションを組むとき、メゾサイクルごとにトレーニング目的を設定する。その目的に対して適切な変数を設定できなければ、計画は絵に描いた餅になる。
この記事では、4つの主要なトレーニング目的ごとに、変数の設定ガイドラインを具体的な数値で整理する。
4つのトレーニング目的とは
レジスタンストレーニングの主要な目的は、以下の4つに分類される。
筋肥大(Hypertrophy):筋断面積の増大
最大筋力(Maximal Strength):1RMの向上
パワー(Power):力×速度の最大化
筋持久力(Muscular Endurance):反復的な力発揮の持続
ピリオダイゼーションの中で、これらは通常この順番に並ぶ。準備期の前半で筋肥大の土台を作り、中盤で最大筋力に移行し、後半でパワーへ発展させ、競技特性に応じて筋持久力も組み込む。
各目的で使うべき変数が明確にわかっていれば、メゾサイクルの設計が格段にスムーズになる。
1. 筋肥大(Hypertrophy)
筋肉の断面積を増やすことが目的。筋肥大は最大筋力の基盤であり、準備期前半(一般的準備期/GPP)の中心的なトレーニング目的になる。
変数の設定ガイドライン
強度(%1RM):65〜75% レップ数:8〜12回 セット数:3〜4セット(種目あたり) セット間休息:60〜90秒 テンポ:2-0-2(下降2秒-ボトム0秒-上昇2秒)程度 週あたり頻度:各筋群を週2〜3回 種目数:4〜6種目/セッション
設計のポイント
メカニカルテンション(力学的張力) と メタボリックストレス(代謝的ストレス) の両方が筋肥大の主要な刺激になる。中程度の強度で十分なレップ数を稼ぎ、短めの休息で代謝的なストレスを蓄積させるのが基本戦略だ。
セット間の休息が短いのがこの目的の特徴で、筋肥大期のセッションは他の目的に比べて「きつく感じる」が、使用重量自体は中程度だ。
種目選択はコンパウンド種目(スクワット、ベンチプレス、ローイングなど)を中心に、アイソレーション種目(カール、レイズなど)を補助的に加える。
RPEの目安
RPE 7〜8。「あと2〜3レップできた」くらいの余力を残す。筋肥大期はボリュームが重要なので、RPEを上げすぎるとセット数をこなせなくなる。
2. 最大筋力(Maximal Strength)
1RMを向上させることが目的。準備期の中盤〜後半(専門的準備期/SPP)の中心的なトレーニング目的だ。筋肥大期で増やした筋量を「使える筋力」に変換するフェーズとも言える。
変数の設定ガイドライン
強度(%1RM):82〜92% レップ数:2〜5回 セット数:3〜5セット(種目あたり) セット間休息:3〜5分 テンポ:最大努力で挙上(下降はコントロール) 週あたり頻度:各筋群を週2〜3回 種目数:2〜4種目/セッション
設計のポイント
最大筋力の向上は、主に神経系の適応によって起きる。運動単位の動員数の増加、発火頻度の上昇、筋繊維間の協調性の改善——これらを引き出すには、高強度の刺激が必要だ。
セット間の休息を長く取るのが重要。3〜5分の休息を確保することで、ATP-PCr系のエネルギーが回復し、次のセットでも高い力発揮が可能になる。休息を短くすると疲労が蓄積し、フォームが崩れて怪我のリスクが上がる。
種目数は少なく絞る。スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどの多関節コンパウンド種目に集中し、セッションの密度を高める。
RPEの目安
RPE 8〜9.5。「あと1〜2レップ」の余力。最終セットではRPE 9〜9.5に達することもあるが、フォームが崩れるRPE 10は避ける。
3. パワー(Power)
力×速度を最大化することが目的。準備期の後半〜試合期にかけて重要になる。最大筋力で「発揮できる力の大きさ」を高めたうえで、その力を「速く」発揮する能力を鍛える。
変数の設定ガイドライン
強度(%1RM):30〜70%(種目・目的による) レップ数:1〜5回 セット数:3〜6セット(種目あたり) セット間休息:2〜5分 テンポ:最大速度で挙上(意図的に速く) 週あたり頻度:週2〜3回 種目数:2〜4種目/セッション
設計のポイント
パワートレーニングで最も重要なのは挙上速度だ。重量が軽くても重くても、「意図的に最大速度で挙上する」ことが不可欠。動作が遅くなった時点で、パワートレーニングとしての効果は薄れる。
強度帯は目的によって2つに分かれる。
高負荷パワー(60〜70%1RM):重い負荷を速く動かす。クリーン、スナッチなどのオリンピックリフティング種目に適する。
低負荷パワー(30〜50%1RM):軽い負荷を最大速度で動かす。ジャンプスクワット、メディシンボールスロー、バンドを使ったスピードベンチなど。
レップ数は少なく(1〜5回)、疲労で速度が落ちる前にセットを終える。「もっとできる」と感じてもセットを切る。速度の維持が最優先だ。
RPEの目安
RPE 6〜8。余力を多めに残す。パワートレーニングでは疲労による速度低下が最大の敵。きつく追い込むことが目的ではない。
4. 筋持久力(Muscular Endurance)
反復的な力発揮を長時間維持する能力。持久系スポーツや、試合時間が長い競技で重要になる。ピリオダイゼーションの中では、GPPの一部として、あるいは競技特性に応じて試合期にも組み込まれる。
変数の設定ガイドライン
強度(%1RM):50〜67% レップ数:12〜20回以上 セット数:2〜3セット(種目あたり) セット間休息:30〜60秒 テンポ:一定のリズムで反復 週あたり頻度:各筋群を週2〜3回 種目数:4〜6種目/セッション
設計のポイント
筋持久力トレーニングの特徴は、短い休息と高レップだ。30〜60秒の休息では完全に回復しないまま次のセットに入ることになり、これが筋持久力を向上させる刺激になる。
サーキットトレーニングの形式と相性が良い。複数種目を休息なし(あるいは最小限の休息)で連続して行い、1周終わったら60〜90秒の休息を取るという形式は、筋持久力と心肺持久力を同時に鍛えられる。
注意点として、筋持久力トレーニングは最大筋力やパワーとの干渉効果が大きい。同じセッション内や同日に最大筋力トレーニングと筋持久力トレーニングを行うと、両方の効果が減弱する可能性がある。できれば別日、少なくとも別セッションに分けることが望ましい。
RPEの目安
RPE 7〜9。高レップなので終盤はかなりきつく感じるが、フォームが完全に崩れるところまでは追い込まない。
4つの目的の比較一覧
※下の画像に4目的の変数を一覧でまとめてあります。保存しておくとプログラム設計に便利です。
ピリオダイゼーションの中での配置
この4つの目的は、ピリオダイゼーションのメゾサイクルと直結する。
GPP(一般的準備期) → 筋肥大+筋持久力 SPP前半(専門的準備期前半) → 最大筋力 SPP後半(専門的準備期後半) → パワー 試合期 → 最大筋力+パワーの維持
つまり、この記事の4つの設定ガイドラインをそのままメゾサイクルの設計に当てはめれば、各フェーズの具体的なプログラムが組める。ピリオダイゼーションの「中身」は、突き詰めるとこの4つの目的の配列と比率の問題だ。
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