栄養にも「期分け」がある|トレーニングフェーズに合わせる栄養周期化

栄養にも「期分け」がある|トレーニングフェーズに合わせる栄養周期化

トレーニングを期分けするように、栄養も期分けする。

これがニュートリションピリオダイゼーション(栄養周期化)の考え方だ。

「とにかくタンパク質を摂る」「炭水化物は太るから控える」——こうした一律のルールでは、ピリオダイゼーションの各フェーズで変わるエネルギー需要や回復需要に対応できない。準備期と試合期では、トレーニングの目的も負荷も違う。ならば、それを支える栄養も変わって当然だ。

前回までの記事で、回復の本丸は「①睡眠 ②栄養 ③負荷管理」だと書いた。今回はその2番目、栄養を、ピリオダイゼーションの文脈で掘り下げる。

なお、僕は管理栄養士ではないので、この記事は一般的な栄養戦略の枠組みの紹介にとどめる。個別の栄養指導は専門家と連携することを前提に読んでほしい。

栄養周期化とは何か

栄養周期化とは、トレーニングのフェーズや日々の負荷に合わせて、摂取するエネルギー量や栄養素のバランスを調整するという考え方だ。

ポイントは2つの時間軸がある。

①フェーズ単位(マクロ):準備期・試合期・移行期といったマクロサイクルに合わせた栄養設計

②日単位(ミクロ):高強度日・低強度日・休養日といったその日の負荷に合わせた栄養調整

トレーニングを「マクロ→メゾ→ミクロ」の階層で考えるのと同じように、栄養も大きな流れと日々の調整の両方で設計する。

3大栄養素の役割を整理する

具体的な周期化に入る前に、基本を押さえておく。

タンパク質:筋の修復・合成の材料。トレーニングを行うアスリートでは、体重1kgあたり1.6〜2.2gが一般的な目安とされる。フェーズによる変動は比較的小さく、通年で高めに保つ。

炭水化物:トレーニングの主要なエネルギー源。グリコーゲンとして筋肉に蓄えられる。この炭水化物の量こそが、栄養周期化で最も大きく動かす変数だ。トレーニングの量と強度に応じて増減させる。

脂質:ホルモン産生やエネルギー貯蔵に関わる。極端に減らすとホルモンバランスに影響するため、最低限(体重1kgあたり0.5〜1g程度)は確保する。炭水化物を減らすフェーズでは、相対的に脂質の比率が上がる。

栄養周期化の実務は、タンパク質を一定に保ちつつ、炭水化物をトレーニング負荷に合わせて増減させ、脂質で調整するのが基本構造だ。

フェーズ別の栄養戦略

ピリオダイゼーションの各フェーズに対応する栄養戦略を整理する。

準備期(GPP・高ボリューム期)

トレーニングボリュームが最も高く、エネルギー消費が大きい。筋肥大も狙うフェーズなので、エネルギーは充足〜やや余剰、炭水化物は多めに設定する。

筋量を増やしたい場合は、軽度のカロリー余剰(メンテナンスカロリーの+5〜10%程度)を作る。タンパク質はしっかり確保し、高ボリュームトレーニングを支える炭水化物を多めに摂る。

このフェーズで極端な減量を試みると、トレーニングの質が落ち、筋量増加の機会を逃す。「増やす時期」と「絞る時期」を分けるのが周期化の発想だ。

準備期(SPP・高強度期)

最大筋力・パワーが中心になり、ボリュームはやや下がる。エネルギー需要は準備期前半よりわずかに下がるが、高強度トレーニングを支える炭水化物は引き続き重要。

体組成を整えたい場合は、このフェーズで緩やかな減量(軽度のカロリー不足)を行うこともある。ただし、筋力・パワーの向上を妨げない範囲にとどめる。急激な減量は神経系のパフォーマンスを下げる。

試合期

試合でのパフォーマンス発揮が最優先。グリコーゲンを満たした状態で試合に臨むことが重要になる。

試合前日〜当日は炭水化物をしっかり摂取し、筋グリコーゲンを最大化する(カーボローディング的なアプローチ)。試合期は体組成を変える時期ではなく、エネルギーを充足させてコンディションを保つ時期だ。

この時期に減量を続けると、グリコーゲンが枯渇し、試合でのパフォーマンスが落ちる。

移行期(オフシーズン)

トレーニング負荷が下がるため、エネルギー需要も下がる。炭水化物を減らし、全体のカロリーをやや抑えるのが基本。

ただし、移行期は完全にトレーニングをやめる時期ではない(移行期の記事で書いた通り)。アクティブリカバリーを行うので、極端な制限は不要だ。シーズン中に増えた体脂肪を緩やかに整えるのには適した時期でもある。

日単位の栄養調整(デイリーの周期化)

フェーズ単位だけでなく、その日のトレーニング負荷に合わせて日々調整するのが、より精緻な周期化だ。

高強度・高ボリューム日:炭水化物を多めに。トレーニング前後の炭水化物補給を意識し、グリコーゲンを満たしてセッションに臨み、消費したぶんを補給する。

低強度日・技術練習日:炭水化物は中程度。エネルギー需要が下がるぶん、控えめにする。

完全休養日:炭水化物をさらに抑える。エネルギー消費が少ないので、過剰摂取は体脂肪増加につながる。タンパク質は休養日でも維持する(回復のため)。

この「動いた日は多く、動かない日は少なく」という調整をカーボサイクリングと呼ぶこともある。週間のトレーニング負荷の波と、炭水化物摂取の波を一致させるイメージだ。

トレーニング前後の栄養タイミング

周期化とは別に、セッション前後の栄養タイミングも回復に関わる。

トレーニング前(1〜3時間前):消化に負担の少ない炭水化物を中心に。エネルギーを確保してセッションに臨む。

トレーニング後:タンパク質(20〜40g程度)と炭水化物を補給。グリコーゲンの再合成とタンパク質合成を促進する。かつて言われた「30分以内のゴールデンタイム」は、現在では「数時間の幅がある」とされ、それほど厳密ではない。ただし、次のセッションまでの時間が短い場合(連戦・2部練)は、早めの補給が回復に有利だ。

「一律のルール」から「文脈に応じた調整」へ

栄養周期化の本質は、「常に同じ食事」から「フェーズと負荷に応じた食事」への転換だ。

「とにかく糖質制限」「毎日同じマクロ」では、トレーニングのフェーズによって変わる需要に対応できない。高ボリューム期にエネルギーが足りなければトレーニングの質が落ち、休養日に摂りすぎれば体脂肪が増える。

トレーニングを期分けしているなら、栄養も期分けする。両者を連動させることで、トレーニングの効果を最大化し、コンディションを最適に保てる。

ただし、栄養は個人差が大きく、競技特性や減量・増量の目標によって最適解が変わる。具体的な数値設計は、管理栄養士やスポーツ栄養の専門家と連携して行うことを強く推奨する。この記事はあくまで「トレーニングと栄養を連動させる」という枠組みの紹介だ。

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