トレーニング種目の順番はパフォーマンスを変える|科学的根拠に基づく種目配列の原則

トレーニング種目の順番はパフォーマンスを変える|科学的根拠に基づく種目配列の原則

同じ種目を同じセット数、同じ強度で行っても、やる順番を変えるだけでトレーニング効果が変わる

これはトレーニング科学で繰り返し確認されている事実だ。にもかかわらず、種目の順番を「なんとなく」で決めているケースは現場でも多い。

種目配列(Exercise Order)は、プログラム設計の中で見落とされがちだが、強度・ボリューム・頻度と同じくらい重要な変数だ。そしてこの変数は、ピリオダイゼーションのフェーズによっても変わる。

この記事では、種目配列の基本原則を5つに整理し、フェーズごとの適用方法を解説する。

なぜ順番が重要なのか

トレーニングセッション中、種目を重ねるごとに疲労が蓄積していく。セッションの後半に行う種目は、前半に比べて筋力発揮が低下し、レップ数が減少し、フォームが崩れやすくなる。

つまり、セッションの前半に配置した種目ほど、高い質でトレーニングできる

何を前半に置き、何を後半に回すか——この判断が、トレーニングの効果を左右する。

原則①:コンパウンド種目を先、アイソレーション種目を後

最も基本的な原則だ。

コンパウンド種目(多関節種目)

スクワット、デッドリフト、ベンチプレス、ローイング、オーバーヘッドプレスなど。複数の関節と筋群を同時に動員する。

アイソレーション種目(単関節種目)

カール、レイズ、レッグエクステンション、レッグカールなど。1つの関節と限定的な筋群のみを動員する。

コンパウンド種目は神経系への要求が高く、フォームの複雑さも大きい。疲労した状態で行うと、パフォーマンスの低下だけでなく、怪我のリスクも上昇する。

**例:下半身セッション

** 良い順番:スクワット

→ ルーマニアンデッドリフト

→ レッグプレス

→ レッグカール

→ カーフレイズ

悪い順番:レッグエクステンション

→ レッグカール

→ スクワット(疲労状態でスクワット)

原則②:高強度の種目を先、低強度の種目を後

強度(%1RM)が高い種目ほど、フレッシュな状態で行う必要がある。

85%1RM以上の高強度トレーニングでは、神経系の動員が最大限に要求される。疲労した状態では動員率が下がり、狙った刺激が入らない。しかも高重量×疲労はフォーム崩壊と怪我のリスクを大きく高める。

例:最大筋力セッション

良い順番:スクワット 85%1RM × 4rep(メイン)

→ ルーマニアンデッドリフト 75%1RM × 6rep

→ 補助種目

悪い順番:補助種目を多数こなした後にスクワット 85%1RM

原則③:パワー・爆発的種目を最初に

パワー系の種目(クリーン、スナッチ、ジャンプスクワット、メディシンボールスロー等)は、セッションの最初に配置する。

パワートレーニングの効果は挙上速度に依存する。疲労で速度が落ちた状態で行っても、パワートレーニングとしての効果は得られない。

パワー種目は筋力種目よりもさらに前に配置する。セッション中で最もフレッシュな状態で行うべき種目だ。

例:パワー+筋力セッション

①パワークリーン 70%1RM × 3rep × 5set(最初)

②スクワット 82%1RM × 4rep × 4set

③補助種目

原則④:弱点やフォーカスしたい種目を先に

原則①〜③の枠内で、特に伸ばしたい種目を優先的に前半に配置する。

たとえば、ベンチプレスの1RMを重点的に伸ばしたい時期であれば、上半身セッションの最初にベンチプレスを置く。肩のOHP(オーバーヘッドプレス)を優先したい場合はOHPを先に持ってくる。

これは「先に行う種目のパフォーマンスが最も高くなる」という原則の応用だ。同じ原則を逆に使えば、「セッション後半の種目は前半ほどの効果は期待できない」ということにもなる。

プログラムを設計するとき、「この種目はなぜこの位置にあるのか」を言語化できることが重要だ。

原則⑤:上半身と下半身を交互に配置する(条件付き)

スーパーセットやサーキット形式のセッションでは、上半身と下半身の種目を交互に配置することで、一方が休息している間にもう一方をトレーニングできる。

**例:時間効率重視のセッション

** A1:ベンチプレス → A2:スクワット(交互に3セット)

B1:ローイング → B2:ルーマニアンデッドリフト(交互に3セット)

この配列はセッション時間を短縮できるメリットがある。特に試合期のように限られた時間でS&Cを行う場合に有効だ。

ただし、この配列は最大筋力やパワーが目的のフェーズには向かない。最大筋力では十分な休息(3〜5分)を取って毎セット最大限の力発揮をすることが重要であり、スーパーセットでは休息が不足する。

フェーズごとの種目配列の変化

ピリオダイゼーションのフェーズによって、種目配列の考え方も変わる。

GPP(筋肥大フェーズ) コンパウンド種目 → アイソレーション種目の基本順序。種目数は多め(4〜6種目)。スーパーセット形式でボリュームを稼いでもよい。休息は短め(60〜90秒)なので、交互配列が時間効率に寄与する。

SPP(最大筋力フェーズ) メインリフト(スクワット、デッドリフト、ベンチプレス)をセッション冒頭に配置。高強度×十分な休息。補助種目は最小限。スーパーセットは避け、種目ごとにしっかり休息を取る。

パワーフェーズ パワー種目(クリーン、スナッチ等)→ 筋力種目 → 補助種目。パワー種目が最優先。速度を維持できるうちにセットを終える。

試合期(維持フェーズ) メインリフト2〜3種目に絞り、高強度×低ボリューム。補助種目は最小限。時間効率重視でスーパーセットを使うことも。30〜40分で完結させる。

よくある配列ミス

ミス①:カーディオを先にやる

筋力トレーニングの前に長時間の有酸素運動を行うと、筋力トレーニングのパフォーマンスが低下する。干渉効果の記事でも書いたが、筋力→有酸素の順番が基本だ。

例外:ウォームアップとしての5〜10分の軽い有酸素(最大心拍数60%以下)は問題ない。

ミス②:補助種目を先にやりすぎる

メインリフトの前に補助種目を多数行い、メインリフトの段階で疲労している。「時間がなくなってメインを省略する」は最悪のパターン。メインリフトを最初にやって、時間が足りなければ補助種目を省略するほうがはるかに良い。

ミス③:毎回同じ順番で固定する

同じ順番でやり続けると、常に後半に来る種目が不利になる。定期的に種目の順番をローテーションさせることで、すべての種目に均等なトレーニング効果を与えられる。ただし、メインリフト→補助種目の大枠は維持する。

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