体力テストをいつ・何を・どう実施するか|ピリオダイゼーションにおけるテスト計画の立て方

体力テストをいつ・何を・どう実施するか|ピリオダイゼーションにおけるテスト計画の立て方

期分けを組んで、トレーニングを実施した。

「で、結果はどうだったの?」

この問いに答えるのが、体力テストだ。

ピリオダイゼーションにおいて体力テストは「おまけ」ではない。テストは計画の効果を検証し、次のフェーズの設計を修正するためのデータを提供する。テストなしのピリオダイゼーションは、地図なしの航海と同じだ。

でも現場では、「テストをいつやるか」「何を測るか」「結果をどう活かすか」が曖昧なまま、なんとなくシーズン開始前と終了後にテストを行っている——そんなケースが少なくない。

この記事では、体力テストをピリオダイゼーションの中にどう組み込むか、具体的なタイミングと種目選択、結果の活用方法を解説する。

テストには3つの目的がある

体力テストを行う目的は、大きく分けて3つだ。

①ベースラインの把握 シーズン開始時点(準備期の冒頭)で、選手の現在の体力レベルを測定する。ここが「スタート地点」になる。このデータがなければ、トレーニングの効果を客観的に評価できない。

②トレーニング効果の検証 メゾサイクルの切り替え時にテストを行い、「このブロックのトレーニングは狙い通りの効果を出したか」を確認する。筋肥大ブロックの後に筋量や1RMが向上していなければ、何かがうまくいっていない。

③プログラム変数の更新 特に1RMテストは、次のメゾサイクルのトレーニング強度(%1RM)を設定するための基礎データになる。古い1RMのまま強度設定を続けると、実際の能力に対して負荷が合わなくなる。

テストを配置するタイミング

準備期の冒頭(ベースライン)

移行期が終わり、準備期に入る直前〜最初の1週間にベースラインテストを行う。

ただし、オフ明けで身体が鈍っている状態でいきなり最大努力のテスト(1RMテストなど)を行うのは怪我のリスクがある。2週間程度の慣らし期間を経てからテストを実施するほうが安全だ。

スケジュール例: 移行期終了 → 慣らし(2週間)→ ベースラインテスト → GPP本格開始

メゾサイクルの切り替え時

GPPからSPPへの移行時、SPPから試合期への移行時など、メゾサイクルが切り替わるタイミングでテストを入れる。

このテストには2つの役割がある。

終了したブロックのトレーニング効果の検証

次のブロックの強度設定のためのデータ更新

たとえば、GPP(筋肥大ブロック)の最終週にテストを行い、「筋量は増えたか」「1RMは向上したか」を確認する。ここで更新された1RMを基に、SPP(最大筋力ブロック)の強度を設定し直す。

12週間の準備期であれば、テストタイミングは以下のようになる。

0週目:ベースラインテスト 6週目(GPP→SPP切り替え時):中間テスト 12週目(SPP→試合期切り替え時):最終テスト

テーパリング直前

試合期に入る前の最後のテストポイント。テーパリングの設計を確定するための最終データとなる。

ここでの1RMの値は、試合期の強度設定(維持すべき強度レベル)の基準になる。

シーズン終了後

シーズン後、移行期に入る前にテストを行う。準備期冒頭のベースラインと比較することで、「シーズンを通じて体力はどう変化したか」の全体像が見える。

試合期に筋力が低下していないか、パワーは維持できていたか、有酸素能力はどう変動したか——これらのデータが、翌シーズンの計画の改善材料になる。

何を測るか:テスト種目の選択

「全部測りたい」のは山々だが、テストにも時間がかかる。測定種目が多すぎると、テスト自体がセッション数日分を占めてしまう。

現場では、以下の優先順位で種目を選択するのが現実的だ。

最優先:1RM(最大筋力)

スクワット、ベンチプレス、デッドリフトなどの主要リフトの1RM。ピリオダイゼーションの強度設定の根幹であり、筋力の変化を追跡する最も基本的な指標。

直接1RMテスト(実際に1レップの最大重量を挙げる)が理想だが、怪我リスクや時間制約がある場合は、推定1RM(3〜5RMから推定式で算出)でも実用上は十分だ。

高優先:パワー・スピード系テスト

垂直跳び(CMJ:カウンタームーブメントジャンプ)、立幅跳び、メディシンボールスロー、スプリントタイム(10m、30m)。

特にCMJはパワーと神経系の状態を反映しやすく、定期的に測定することでコンディションのモニタリングにも使える。

中優先:体組成

体重、体脂肪率、除脂肪体重。筋肥大ブロックの効果を直接的に評価できる。InBody等の体組成計で計測できればベストだが、最低限、体重と周囲長(大腿周囲、上腕周囲など)の測定でも傾向は掴める。

状況次第:有酸素能力テスト

Yo-Yo IR1テスト、シャトルラン、タイムトライアル。競技の持久力要求に応じて実施する。全員に必須ではないが、持久系スポーツや長い試合時間の競技では重要。

テスト結果の活用方法

テストは「測って終わり」では意味がない。結果をピリオダイゼーションにフィードバックしてはじめて価値を持つ。

①強度設定の更新

1RMテストの結果を基に、次のメゾサイクルの%1RMを更新する。RPEの記事でも書いたが、古い1RMのまま長期間走るのはプログラムの精度低下を招く。

②メゾサイクルの効果検証

「筋肥大ブロックで筋量は増えたか」「最大筋力ブロックで1RMは向上したか」「パワーブロックでCMJのジャンプ高は改善したか」——テスト結果が計画の意図と合致しているかを検証する。

合致していなければ、次のサイクルで変数を調整する。ボリュームが足りなかったのか、強度設定が合っていなかったのか、回復が不十分だったのか。

③選手へのフィードバック

テスト結果を数値で選手に共有することは、モチベーション管理に直結する。準備期の記事でも書いたが、準備期のように成果が見えにくい時期に「スクワットの1RMが5kg上がった」「CMJが2cm伸びた」という数値を見せることで、選手は自分の進歩を実感できる。

④翌シーズンとの比較

テスト結果を記録として蓄積し、年度を超えて比較する。「去年の準備期終了時と今年の準備期終了時で、1RMがどう変わったか」「試合期後の体力低下幅は去年より小さくなったか」——こうした年単位の比較が、コーチの期分けの精度向上を支える。

テスト実施の注意点

テストの標準化

テストの信頼性を保つには、毎回同じ条件で実施することが重要だ。測定時間帯、ウォームアップ手順、測定の順番、使用機器——これらを統一する。

たとえば、CMJのテストで「最初は朝、次は夕方」では、日内変動の影響を受けて比較ができない。

テスト自体がトレーニング負荷になる

1RMテストは最大努力を伴うため、かなりの身体的負荷がかかる。テスト日の前後にはトレーニング強度を落とす配慮が必要だ。

特に複数種目の1RMテストを1日で行う場合は、十分な休息を確保し、疲労による後半種目のパフォーマンス低下に注意する。可能であれば2日に分けて実施する。

全員が同時にテストできるとは限らない

チームスポーツでは、怪我中の選手やコンディション不良の選手がいる。全員が同じ日にテストできないケースは日常的に起きる。

テスト日を複数設定するか、個別にテスト日を調整する柔軟性が計画上必要だ。

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