球技・チームスポーツの期分け|毎週試合がある長いシーズンをどう乗り切るか
サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、ラグビー、ホッケー——これらの球技・チームスポーツには、他の競技とは異なる期分けの難しさがある。
シーズンが長く、試合が毎週(時に週複数回)ある。
陸上や水泳のように「年に1〜2回の大会でピークを作る」というシンプルな設計が通用しない。数ヶ月にわたって毎週試合をこなしながら、その間ずっと高いパフォーマンスを維持しなければならない。
さらに、球技は求められる体力要素が多い。筋力、パワー、スピード、アジリティ(方向転換)、持久力、そして技術・戦術。これらすべてを、長いシーズンを通じて管理する必要がある。
この記事では、球技・チームスポーツ特有の期分けの課題と、その対処法を解説する。
球技の期分けが難しい4つの理由
①シーズンが長い
多くの球技リーグは、数ヶ月〜半年以上にわたる。この間、毎週のように公式戦が続く。「試合期」が競技人生の大半を占めるのが球技の特徴だ。
準備期(プレシーズン)は数週間〜2ヶ月程度しか取れないことが多く、この短い期間で長いシーズンを戦い抜く土台を作らなければならない。
②試合が高頻度
週1試合が基本だが、カップ戦や過密日程では週2〜3試合になることもある。試合そのものが大きな負荷であり、試合間の回復とトレーニングのバランスが極めて難しい。
③多様な体力要素が必要
球技は、瞬発的なスプリント、方向転換、ジャンプ、接触プレー、そして試合時間を通じた持久力——多様な体力要素を同時に要求する。特定の一つを鍛えればいいわけではない。
④選手ごとに出場時間・役割が違う
先発フル出場の選手と、途中出場や控えの選手では、試合からの負荷がまったく異なる。同じチームでも、選手ごとにコンディションと必要なトレーニングが変わる。
球技の年間構造
球技のピリオダイゼーションは、大まかに以下の構造になる。
プレシーズン(準備期)
シーズン開幕前の数週間〜2ヶ月。ここで一年を戦う土台を作る。
前半は一般的準備期(GPP)として、筋肥大・基礎筋力・有酸素能力を高める。後半は専門的準備期(SPP)として、パワー・スピード・アジリティ・競技特異的な持久力へシフトする。同時に、チーム戦術の構築も並行して進む。
プレシーズンが短いのが球技の泣きどころだ。この限られた期間で、いかに効率的に土台を作れるかが、シーズン全体を左右する。
インシーズン(試合期)
シーズン本番。毎週の試合をこなしながら、体力の維持とコンディション管理を行う。
ここでの原則は、以前「試合期のS&C」の記事で書いた通り——「少なく、でも重く」。ボリュームは抑えつつ、強度を維持して、プレシーズンで築いた体力を落とさない。
球技のインシーズンでは、S&Cは週1〜2回程度になる。試合日から48〜72時間空けて配置し、試合のパフォーマンスに影響しないようにする。
オフシーズン(移行期)
シーズン終了後の数週間。心身の回復とリセットを行う。完全休養とアクティブリカバリーを組み合わせ、次のプレシーズンに向けて準備する。
インシーズンの週間管理(マイクロサイクル)
球技の期分けで最も重要かつ難しいのが、試合を軸にした週間管理(マイクロサイクル)だ。
週1試合の場合、試合日を基準にした典型的な週の組み立てを見てみる。試合日を「MD(Match Day)」とし、その前後を「MD-1(試合前日)」「MD+1(試合翌日)」のように表す。
MD(試合日):試合。最大負荷。
MD+1(試合翌日):リカバリー。軽いアクティブリカバリー、または完全休養。出場時間の長かった選手ほど回復を優先。
MD+2(試合2日後):ここで高強度のトレーニングを入れることが多い。S&C(筋力・パワー)や高強度の戦術練習。試合から最も遠く、次の試合までも時間があるため、負荷をかけられる。
MD-3(試合3日前):中強度。戦術練習中心。
MD-2(試合2日前):中〜低強度。セットプレーや戦術確認。
MD-1(試合前日):低強度・低ボリューム。軽い調整、セットプレー確認。疲労を残さない。
このように、試合日から逆算して負荷の波を作る。試合直後と試合直前は負荷を抑え、週の中盤に負荷のピークを持ってくる。これが球技のマイクロサイクルの基本形だ。
過密日程(週2試合)の場合は、この波を作る余裕がなく、ほぼリカバリーと試合の繰り返しになる。この時期はトレーニングによる向上は望めず、いかにコンディションを維持して試合に臨むかが焦点になる。
球技のインシーズンでS&Cを続ける重要性
球技の現場で最も多い失敗が、「インシーズンにS&Cをやめてしまう」ことだ。
試合と戦術練習で忙しく、ウエイトルームに行く時間が取れない。気づけばシーズンを通してS&Cゼロ——これは非常に多い。
しかし、プレシーズンで築いた筋力・パワーは、刺激がなくなると数週間で低下し始める。シーズン後半にパフォーマンスが落ちる、怪我が増える——その一因は、S&Cの中断による体力低下だ。
週1回、20〜40分でもいい。高強度・低ボリュームで、主要な筋力・パワーを維持する。これがシーズンを通じたパフォーマンス維持の鍵になる。
負荷モニタリングが特に重要
球技では、試合とトレーニングの負荷が複雑に絡み合う。選手ごとに出場時間も違う。だからこそ、負荷のモニタリングが特に重要になる。
以前紹介したsRPE(セッションRPE)やACWR(急性慢性負荷比)は、球技のインシーズン管理で威力を発揮する。試合とトレーニングを合わせた総負荷を数値で把握し、ACWRが危険域に入っていないかを監視する。
出場時間の長い選手は負荷が高く、控えの選手は負荷が低い。控えの選手には別途トレーニングで負荷を補い、先発の選手は回復を優先する——こうした個別の調整が、負荷データによって可能になる。
球技の期分けの要点
球技・チームスポーツの期分けを整理すると、要点はこうなる。
短いプレシーズンで、いかに効率的に土台を作るか。長いインシーズンを、試合を軸にしたマイクロサイクルでどう乗り切るか。インシーズンもS&Cを止めず、「少なく、でも重く」で体力を維持する。そして、選手ごとに異なる負荷を、モニタリングによって個別に管理する。
「年に1回ピークを作る」タイプの競技とは、まったく異なる設計思想が求められる。球技の期分けは、長期戦をいかに安定して戦い抜くかの設計だ。
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