試合期にS&Cトレーニングをやめていませんか? 試合期の強度・量・頻度の設計方法
シーズンが試合期に入ると、S&Cトレーニングの扱いが急に曖昧になるチームがある。
「試合が続くからフィジカルは休ませよう」 「競技練習が優先だからウエイトは減らしていこう」 「コンディション維持だけでいい」
気持ちはわかる。試合期は競技練習と試合で日程が詰まっているし、選手に余計な疲労を与えたくない。でも、「S&Cを減らす」と「S&Cをやめる」は全然違う。
試合期にS&Cトレーニングをやめてしまうと、準備期に時間をかけて積み上げた筋力やパワーが、シーズン中に徐々に落ちていく。いわゆるディトレーニング(脱トレーニング)だ。
この記事では、試合期のS&Cトレーニングをどう設計すればいいのか——強度・ボリューム・頻度の具体的な目安と、現場での考え方を書いてみたい。
試合期にS&Cをやめると何が起きるか
準備期に6〜8週間かけて向上させた最大筋力は、トレーニング刺激がなくなると2〜3週間で低下が始まると言われている。パワー(爆発的な力発揮能力)はさらに敏感で、刺激がなくなると比較的早く落ちる。
つまり、長い試合期(8〜12週間)でS&Cトレーニングを完全にやめてしまうと、シーズン終盤には準備期の成果がかなり失われている可能性がある。
シーズン序盤はコンディションが良かったのに、終盤になるとパフォーマンスが落ちてくる——これは疲労の蓄積だけが原因ではなく、S&Cトレーニングの中断によるフィジカルの低下が影響していることがある。
試合期のS&Cで守るべき3つの原則
試合期のS&Cトレーニングは、準備期とは目的が異なる。準備期は「向上」、試合期は「維持」だ。ただし、「維持」にも設計が必要で、闇雲に軽くすればいいわけではない。
原則1:強度は維持する
これが最も重要なポイントだ。
試合期であっても、トレーニング強度(使用重量)は準備期と同等かそれに近い水準を維持する。80〜85%1RMで3〜5レップ程度のセットを維持することで、筋力レベルと神経系の活性を保つことができる。
「試合期だから軽い重量で」と強度を50〜60%1RMまで落としてしまうと、最大筋力の維持に必要な神経系の刺激が不足する。軽い重量で多レップを行うのは筋持久力には有効だが、最大筋力やパワーの維持には向いていない。
原則2:ボリュームは大幅に削減する
強度を維持する代わりに、ボリューム(総セット数・総レップ数)は準備期の40〜60%程度まで落とす。
具体的には、準備期に4セット×5レップで行っていた種目を、2セット×3〜5レップに減らす。種目数も絞り込んで、主要なコンパウンド種目(スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなど)に集中する。補助種目は最小限に。
ボリュームを落とすことで、トレーニングによる疲労の蓄積を抑えながら、強度維持による筋力保持を両立できる。
原則3:頻度は柔軟に調整する
試合期のトレーニング頻度は、試合スケジュールに合わせて柔軟に調整する。
準備期に週3〜4回だったS&Cセッションを、試合期は週1〜2回に減らすのが一般的だ。週末に試合がある場合、試合翌日はリカバリーに充て、試合から最も離れた平日にS&Cセッションを配置する。
ポイントは、試合日からの逆算だ。試合の48〜72時間前までにS&Cセッションを終えるのが目安。試合前日や前々日に高強度のS&Cを入れると、急性疲労が試合パフォーマンスに影響する。
試合期の週間スケジュール例
週末(土曜)に試合があるチームの場合、典型的な週間配置は以下のようになる。
月曜:S&Cセッション(メイン) → 高強度・低ボリューム
火曜:競技練習(戦術・技術)
水曜:S&Cセッション(サブ) → 中強度・補助種目中心 ※余裕があれば
木曜:競技練習(試合準備)
金曜:試合前日 → 軽い調整のみ
土曜:試合
日曜:試合翌日 → リカバリー(軽い有酸素・ストレッチ)
月曜のS&Cセッションが「メイン」で、ここで強度を維持する。水曜は「サブ」として補助的な種目や軽めのパワー系を入れるが、木曜以降の試合準備に影響しないよう調整する。
試合が週2回ある場合は、S&Cは週1回がベースになる。試合間の「最も試合から離れた日」にメインセッションを入れる。
「試合期だから軽く」の落とし穴
現場でよく見る失敗パターンがある。
「試合期だからS&Cは軽めでいい」という判断で、強度もボリュームも頻度もすべて落としてしまうケースだ。
40〜50%1RMで15レップ×2セット、週1回——こうしたメニューは、やっている感はあるが、最大筋力もパワーも維持できない。選手にとっては「疲れないけど効果もない」トレーニングになる。
試合期のS&Cで大事なのは、「少なく、でも重く」だ。セッション時間は短くていい。30〜40分で十分。その短い時間の中で、高強度の刺激を身体に入れる。これが試合期のS&Cの本質だ。
試合スケジュールとS&Cの配置を一元管理する
試合期のS&Cトレーニングを適切に設計するには、試合スケジュールとS&Cセッションの配置を同じ画面で確認できることが重要だ。
頭の中で「来週は水曜に試合があるから、月曜にS&Cを入れて……」と管理するのは、試合が毎週同じ曜日なら可能だ。でも、現実には試合日が週によって変わったり、連戦が続いたり、遠征が入ったりする。
試合日程の変動に応じてS&Cセッションの配置を柔軟に調整するには、年間計画の中で「試合日」と「S&Cセッション」が視覚的に並んでいて、ドラッグ一つで再配置できる環境が理想だ。
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