移行期(オフシーズン)は「何もしない期間」ではない|次のシーズンにつなげる移行期の設計
シーズンが終わって、ほっとする。
選手もコーチも「やっと終わった」という気持ちになる。そして移行期(オフシーズン)に入る。
このとき、多くのチームで起きるのが「完全に休む」か「なんとなく練習を続ける」のどちらかだ。どちらも、もったいない。
移行期は、ただの休みではない。次のシーズンの準備期にスムーズに入るための「橋渡し」だ。ここを適切に設計できるかどうかで、翌シーズンの立ち上がりのスピードが変わる。
この記事は、準備期・試合期の設計に続く3本目だ。この3つが揃って、年間計画の全体像が完成する。
移行期の目的は「回復」と「リセット」
移行期の目的は大きく2つある。
①身体的な回復 シーズンを通じて蓄積した深い疲労——筋肉、関節、腱、靭帯への負荷——を回復させる。ディローディングでは取りきれないレベルの蓄積疲労をリセットする期間だ。
特に注意したいのは、筋骨格系の微小なダメージだ。シーズン中は痛みを感じないまま負荷がかかり続けている部位がある。移行期にしっかり休むことで、これらが修復される。
②精神的なリフレッシュ 長いシーズンで蓄積した精神的な疲労も見逃せない。毎週の試合へのプレッシャー、厳しいトレーニングの継続、結果に対するストレス。移行期は、こうした精神的な負荷から選手を解放する時期でもある。
「回復」は受動的なもの、「リフレッシュ」は能動的なもの。移行期にはこの両方が必要だ。
移行期の期間と活動内容
期間の目安
移行期の適切な期間は、一般的に2〜4週間だ。
短すぎると回復が不十分になる。長すぎるとディトレーニング(体力低下)が進みすぎて、次の準備期の立ち上がりが重くなる。
シーズンの長さや強度によっても変わる。年間通じて試合があるような過密スケジュールのシーズン後は4週間。比較的余裕のあるシーズン後は2週間でも十分なことがある。
完全休養か、アクティブリカバリーか
結論から言えば、完全休養は最初の1週間程度にとどめ、残りはアクティブリカバリーにするのが推奨だ。
完全休養が長すぎると、心肺機能の低下が早い段階で始まる。有酸素能力は、トレーニングを中断して1〜2週間で低下が見られるという報告もある。筋力の低下は有酸素能力ほど早くはないが、3〜4週間の完全休養では確実に落ちる。
アクティブリカバリーの内容は、競技トレーニングとは異なる軽い運動が適している。
軽いジョギングやサイクリング(最大心拍数の60〜65%程度)
水泳やアクアエクササイズ
ヨガやピラティス
レクリエーション的なスポーツ(バスケ、フットサル、テニスなど)
軽いウエイトトレーニング(通常の40〜50%のボリューム・強度)
ポイントは、「楽しめること」だ。シーズン中にはできなかった別の運動をすることで、精神的なリフレッシュと身体的な活動維持を両立させる。
移行期にS&Cコーチがやるべきこと
選手が休んでいる間、S&Cコーチにとっての移行期は「暇な時期」ではない。むしろ、次のシーズンに向けた重要な準備期間だ。
①シーズンの振り返り
今シーズンの期分けは計画通りに機能したか。準備期の長さは十分だったか。テーパリングのタイミングは適切だったか。ディローディングの配置に改善点はないか。
選手ごとのデータ——体力テストの推移、怪我の発生タイミング、パフォーマンスの波——を元の計画と照合して検証する。
この振り返りの質が、翌シーズンの計画の質を決める。
②翌シーズンの計画策定
移行期は、翌シーズンの年間計画を組み始める最良のタイミングだ。
今シーズンの振り返りが新鮮なうちに、改善点を反映した翌シーズンの計画を立てる。試合スケジュールが判明していれば、準備期の長さも確定できる。
前年の計画をベースに修正を加える形で組めれば、ゼロからの作成よりはるかに効率的だ。
③選手の個別評価
移行期の終盤(準備期に入る直前)に、各選手の現在の体力レベルを評価する。シーズン後にどの程度の体力低下が起きたか。既往歴の状態はどうか。
この評価を元に、準備期の個別プログラムを微調整する。全員同じスタートラインではない。
移行期から準備期への移行
移行期で最も気をつけるべきタイミングが、準備期への切り替え時だ。
アクティブリカバリーで軽い運動を続けていたとしても、移行期の負荷レベルと準備期の負荷レベルには大きな差がある。ここで急に準備期のフルボリュームに入ると、身体がついていけない。
以前の記事でも書いたが、準備期の最初の2週間は「慣らし期間」として、目標ボリュームの60〜70%から始めるべきだ。
年間計画上では、移行期→慣らし(準備期の最初の2週間)→GPP本格開始、という3段階の移行をあらかじめ設計しておくとスムーズだ。
移行期を「設計する」という発想
移行期は「トレーニングがない期間」ではなく、年間計画の中に明確に位置づけられるフェーズだ。準備期と試合期と同じように、開始日・終了日・活動内容が設計されていてこそ機能する。
「オフだから好きにしていい」では、選手によって過ごし方がバラバラになる。完全に休んでしまう選手と、自主練でガンガン追い込む選手が混在する。どちらも準備期の立ち上がりに影響する。
移行期の過ごし方を年間計画上でチームとして共有しておくことで、全員が同じ状態で準備期に入れる。
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