VBT(速度ベーストレーニング)とは? バーベルの「速度」で強度を管理する新しい方法

VBT(速度ベーストレーニング)とは? バーベルの「速度」で強度を管理する新しい方法

VBT(速度ベーストレーニング)とは? バーベルの「速度」で強度を管理する新しい方法

「今日は80%1RMで5レップ」——強度を%1RMで決めるのは、トレーニングの基本だ。

でも、この方法には弱点がある。1RMは日によって変動するのに、%1RMは固定された数字を使うことだ。睡眠不足の日も絶好調の日も、同じ「80%=◯◯kg」で行うことになる。

この問題を解決するアプローチとして、RPE(主観的運動強度)を以前紹介した。そしてもう一つ、近年急速に普及しているのがVBT(Velocity Based Training:速度ベーストレーニング)だ。

VBTは、バーベルの「挙上速度」を測定して、その日のコンディションに合った強度をリアルタイムで管理する方法だ。

この記事では、VBTの基本、速度と強度の関係、現場での活用方法、そしてピリオダイゼーションの中での位置づけを解説する。

VBTとは何か

VBTは、トレーニング中のバーベル(または身体)の移動速度を測定し、その速度を指標としてトレーニングを管理する手法だ。

測定には、リニアポジショントランスデューサー(バーに取り付けるワイヤー式の機器)や、加速度センサー、カメラベースのアプリなどが使われる。近年は数千円〜数万円のデバイスやスマホアプリでも測定できるようになり、現場への普及が進んでいる。

VBTの核心は、「速度と強度(%1RM)には強い相関がある」という事実だ。

速度と%1RMの関係

同じ種目で、重量が重くなるほど、挙上速度は遅くなる。これは直感的に理解できる。軽い重量は速く挙がり、重い重量はゆっくりしか挙がらない。

この関係は非常に安定していて、ある種目では「この速度=この%1RM」という対応関係がほぼ一定になる。

たとえばスクワットの場合、おおよその目安として:

最大速度(m/s)が速いほど低強度、遅いほど高強度に対応する。具体的には、1.0 m/s前後で約50%1RM、0.5〜0.6 m/s前後で約80%1RM、0.3 m/s前後で90%1RM以上、というような対応関係がある(数値は種目・個人で異なる)。

つまり、バーの速度を測れば、その日その重量が「実際に何%1RM相当の負荷なのか」がわかる

ここがVBTの強力なポイントだ。1RMが日々変動しても、速度を見れば「今日のこの重量は、いつもより重く感じている(速度が遅い)」ということがリアルタイムでわかる。

VBTでわかること・できること

①その日のコンディションを客観的に把握できる

ウォームアップで一定重量を挙げたときの速度を見れば、その日の調子がわかる。

たとえば、いつも60kgを1.0 m/sで挙げられる選手が、ある日0.85 m/sしか出なかったら、その日はコンディションが低下している可能性が高い。逆に普段より速ければ調子が良い。

この客観的なデータを基に、その日のトレーニング強度を調整できる。

②狙った強度をリアルタイムで管理できる

「今日は最大筋力狙いで、0.5 m/sを下回らない範囲で重量を上げる」といった設定ができる。重量を上げていって、速度が目標値を下回ったらそこで止める。

これにより、その日の実際の能力に合った最適な重量でトレーニングできる。固定の%1RMより精密だ。

③疲労による速度低下でセットを管理できる(VBTオートレギュレーション)

セット中、レップを重ねると疲労で速度が落ちていく。「最初のレップから速度が◯%低下したらセット終了」というルール(速度ロス・カットオフ)を設けることで、過度な疲労を防ぎながら効果的なボリュームを確保できる。

たとえば「速度が20%低下したらセット終了」とすれば、フォームが崩れるまで追い込む前にセットを切れる。パワーや筋力の目的では、速度低下を小さく抑える(10〜20%)。筋肥大目的では大きめ(20〜40%)に許容する。

④モチベーションとフィードバック

速度がリアルタイムで数値表示されると、選手は「もっと速く挙げよう」という意識が働く。特にパワー系トレーニングでは、速度フィードバックがあるだけで実際の挙上速度が向上するという報告がある。

%1RM・RPE・VBTの使い分け

ここまでで、強度管理には3つのアプローチが出揃った。整理しておく。

%1RM(絶対値ベース) 事前に決めた固定の重量。計画が立てやすい。メゾサイクルの設計に向く。弱点は日々のコンディション変動を反映できないこと。

RPE(主観ベース) その日の体感で調整。機器不要でコストゼロ。弱点は主観なので選手による精度差があること。

VBT(速度ベース) その日のコンディションを客観的な数値で反映。精密。弱点は測定機器が必要なこと、種目が限られること(速度が明確に測れるコンパウンド種目向き)。

これらは対立するものではなく、組み合わせて使うのが理想だ。メゾサイクルの骨格は%1RMで設計し、日々の実行をRPEやVBTで微調整する。VBTのデータが蓄積されれば、RPEの精度を裏付ける客観データにもなる。

VBTの注意点と限界

VBTは強力だが、万能ではない。

①種目が限られる 速度が明確に測れるのは、スクワット、ベンチプレス、デッドリフト、クリーンなどのバーベルコンパウンド種目が中心。アイソレーション種目や複雑な動作には適用しにくい。

②速度-強度の関係は個人ごとに確立が必要 「この速度=この%1RM」の対応関係は、種目ごと・個人ごとに多少異なる。導入初期に各選手の速度プロファイルを把握する作業が必要だ。

③機器のコストと運用 以前より安価になったとはいえ、機器の導入と運用には一定のコストと手間がかかる。チーム全体で運用する場合は、測定のオペレーションも設計する必要がある。

④速度だけに依存しない 速度は強力な指標だが、それだけで全てを判断するのは危険だ。RPE、選手の主観、フォームの観察などと併用する。

ピリオダイゼーションの中でのVBT

VBTはピリオダイゼーションの各レベルで活用できる。

ミクロ(セッション)レベル その日のウォームアップ速度でコンディションを把握し、当日の負荷を調整。速度ロス・カットオフでセットのボリュームを管理。

メゾ(ブロック)レベル 速度ゾーンを使ってフェーズの目的を管理。筋力ブロックでは遅い速度ゾーン(高強度)、パワーブロックでは速い速度ゾーン(中強度・高速)を狙う。

マクロ(年間)レベル 一定重量の挙上速度を定期的に記録することで、年間を通じた筋力・パワーの変化を追跡。体力テストの指標としても使える。

VBTで得られた速度データは、sRPEや体力テストのデータと並ぶ「客観的なモニタリング指標」だ。これらのデータを年間計画と照合することで、計画と実行のギャップを可視化し、期分けの精度を高められる。

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