垂直跳び(CMJ)の測り方と読み方|ジャンプ高だけでなく左右差・RSIまで

垂直跳び(CMJ)の測り方と読み方|ジャンプ高だけでなく左右差・RSIまで

垂直跳びは、現場で最も手軽に測れるパワー系の指標だ。特別な機材がなくても、壁とチョーク、あるいはスマホのスロー撮影があれば始められる。

だが、「何cm跳べたか」だけを記録して終わっているケースは多い。垂直跳びは、測り方をそろえ、ジャンプ高以外の指標にも目を向けると、選手のパワー・コンディション・左右差まで見える便利なテストになる。

この記事では、最も一般的な垂直跳びであるCMJ(カウンタームーブメントジャンプ)を軸に、測り方の統一、評価の読み方、記録の残し方を整理する。

CMJ(カウンタームーブメントジャンプ)とは

CMJは、立った姿勢から一度しゃがみ込み(カウンタームーブメント=反動動作)、そのまま跳び上がるジャンプだ。しゃがむ反動で筋腱に弾性エネルギーをためて跳ぶため、反動を使わないジャンプ(スクワットジャンプ)より高く跳べる。

垂直跳びにはいくつか種類がある。

  • CMJ:反動あり。腕振りなしが基本(手を腰に当てる)。最も標準的で再現性が高い。
  • スクワットジャンプ(SJ):しゃがんだ姿勢で静止してから跳ぶ。反動を使わない純粋な力発揮を見る。
  • アバラコフジャンプ:腕振りあり。競技に近いが、腕の使い方で数値がぶれやすい。

まず現場に1つ入れるなら、再現性の高いCMJ(腕振りなし)を基準にするのが扱いやすい。

測り方をそろえる

垂直跳びは、測り方が少し変わるだけで数値が動く。同じ条件で測り続けることが、記録を意味のあるものにする最大のポイントだ。

統一しておきたい条件

  • 反動の深さ:毎回同じ深さでしゃがむ。深さがばらつくと数値もばらつく。
  • 腕の使い方:CMJなら腰に手を当てて固定する。腕を使う日と使わない日が混ざると比較できない。
  • 測定機器:ジャンプマット、ヤードスティック(Vertec)、壁+チョーク、スマホのスロー動画など。機器を変えると数値の基準が変わるので、途中で変えない。
  • 試技数:2〜3回跳んで最高値を採用するのが一般的。回数も固定する。
  • タイミング:測定日の中での順番(ウォームアップ後すぐか、練習後か)をそろえる。疲労状態で数値は変わる。

スマホで測るときの注意

滞空時間から跳躍高を計算できるが、接地の瞬間を正確に捉えないと誤差が出る。スロー撮影(120fps以上)で離地と接地のフレームを見て、滞空時間から算出する方法が現実的だ。厳密さより、毎回同じ手順で測ることを優先する。

平均値の表を探す前に、チーム内の分布を作る

「うちの選手の◯◯cmは高いのか低いのか」を知りたくなって、年代別・競技別の平均値を探す人は多い。だが、外から持ってきた基準値は使いどころが限られる。

理由は単純で、その表がどう測られたかが分からないからだ。腕振りありか、反動の深さは、機器は何か、試技は何本の最高値か——これらが違えば数字は簡単に数cm動く。腕振りを許すだけで跳躍高は明確に上がる。条件の違う数字と自チームの数字を並べても、優劣は判断できない。

現実的なのは、自分のチームの分布を基準にすることだ。全員を同じ条件で測れば、その中での上下は正しく比較できる。人数が揃ってきたら、ポジション別・学年別に分けて見る。外部の基準値は「桁が合っているか」の確認程度に留めて、判断の土台にはしない。

なお、学年が混ざったチームでチーム平均と比べると、1年生がずっと平均以下に表示され続ける。フィードバックとして機能しないので、学年で区切るか、本人の推移だけを見せるかを選ぶ。

何cm変われば「伸びた」と言えるか

測定でいちばん多い誤解は、前回より数値が上がったら伸びた、と即断してしまうことだ。

垂直跳びは、同じ選手を同じ日に測り直しても数値がぶれる。反動の深さ、踏切のタイミング、その日の集中——条件をそろえても完全には消えない。つまり、測定値には必ず誤差の幅がある。この幅より小さい変化は、伸びたのではなく揺らいだだけの可能性がある。

自分の現場の誤差の幅は、実測できる。同じ選手に、同じ日のうちに、間を空けて2回測る。これを何人かでやれば、「うちの測り方だと、だいたいこのくらいはぶれる」という感覚が数字で持てる。以降は、その幅を超えた変化かどうかで判断する。

この考え方が身につくと、判断が変わる。

  • 誤差の幅に収まる変化 → トレーニングの評価には使わない
  • 幅を明確に超えた変化 → 伸び(または落ち込み)として扱う
  • 幅を超える低下が続く → コンディションの問題を疑う

機器を変えたときも同じで、機種を変えた前後は比較しない。新しい機器で測り直したところから、改めて基準を作る。

CMJとスクワットジャンプの差で何が分かるか

CMJとスクワットジャンプ(SJ)を両方測ると、単体では見えないものが出てくる。

CMJは反動を使い、SJは使わない。その差が、反動で生まれた弾性エネルギーをどれだけ使えているかの目安になる。差が小さい選手は、しゃがみ込みで貯めた力を跳躍につなげきれていない可能性がある。切り返しが遅い、体幹が緩んで力が逃げている、といった原因が考えられる。

処方に落とすと、こう分かれる。

  • CMJとSJの差が小さい → 切り返しの速さ・弾性の利用が課題。プライオメトリクスや、反動を意識したジャンプ系ドリル
  • どちらも低い → そもそもの力発揮が課題。まず筋力トレーニング

ただしSJは「静止してから跳ぶ」という条件を守るのが難しく、反動が混ざると意味がなくなる。しゃがんだ姿勢で2〜3秒静止してから跳ばせる、揺れたらやり直す、といった運用を決めておく。

測る頻度は、目的で決める

垂直跳びには性格の違う2つの使い道があり、頻度は目的で変わる。

体力の評価として使う場合は、期分けの節目で十分だ。準備期の入り口と出口、試合期の前など、年に3〜4回。パワー系の指標がトレーニングの効果を映すには時間がかかるので、毎週測っても変化は読み取れない。

コンディションの指標として使う場合は、頻度を上げる。週1回など短い間隔で測り、その選手の「いつもの値」からの落ち込みを見る。ただしこの用途では、測定そのものが負荷になる点に注意がいる。全力ジャンプを頻繁に入れるなら、練習の負荷として計算に入れる。

両方をやろうとして中途半端な頻度(月1回など)になると、体力の評価には粗く、コンディションの把握には遅い、という一番使いにくい形になる。どちらの目的で測るのかを先に決める。

数値がばらつくときのチェックリスト

記録が安定しないときは、たいてい測り方に原因がある。

  1. 反動の深さがばらついていないか — 選手ごとに深さの感覚が違う。動画で確認する
  2. 腕が動いていないか — 腰に手を当てていても、跳ぶ瞬間に肘が開くと数値が上がる
  3. 測定のタイミングが日によって違わないか — ウォームアップ直後と練習後では別物
  4. 試技数と採用値のルールが変わっていないか — 「3本の最高値」と決めたら守る
  5. 計測者が変わっていないか — 目視で判定する方法では、人が変わると基準が変わる
  6. 接地の判定は正しいか — スマホ計測では、フレームの見落としがそのまま誤差になる

これらを潰しても揺れが残るなら、それがその現場の誤差の幅だ。消そうとせず、幅として受け入れて判断に組み込む。

ジャンプ高だけでなく、何を見るか

垂直跳びの価値は、ジャンプ高以外の指標に広がる。

① 左右差

片脚ずつ跳ぶ(シングルレッグCMJ)と、左右のジャンプ高の差が見える。左右差が大きい場合、片脚の筋力・パワー不足や、過去の怪我の影響が背景にあることがある。復帰選手のスクリーニングにも使える。左右差だけで診断はできないが、「気にして観察する選手」を見つける手がかりになる。差が大きい選手が出てきたら、筋力スクリーニングで左右それぞれの発揮筋力を確認すると、パワーの問題なのか筋力そのものの問題なのかを切り分けられる。

② RSI(リアクティブ・ストレングス・インデックス)

RSIは、跳躍高を接地時間で割った値で、「短い接地でどれだけ跳べるか=ばね」を表す。ドロップジャンプで測ることが多い。同じジャンプ高でも、接地が短いほどRSIは高い。プライオメトリクスの効果を見るときに役立つ。

③ コンディションの変化

同じ選手のCMJを継続して測ると、普段より明らかに落ちた日が疲労のサインになることがある。1回の数値ではなく、その選手の「いつもの値」からの変化を見る。ただし日々の細かな上下は正常な範囲でも起きるので、大きな低下が続くかどうかで判断する。

記録の残し方

垂直跳びは、測って終わりでは活きない。継続して記録し、その選手の推移として見ることで初めて意味が出る。

  • 測定日・条件(機器・反動の深さ・腕の有無)をそろえて記録する
  • チーム平均や順位だけでなく、選手ごとの推移を残す
  • 準備期・試合期など、どのトレーニング期に測った値かをセットで残す

パワー系の指標は、筋力トレーニングやプライオメトリクスの効果を映すまでに時間がかかる。準備期の入り口と出口、試合期の前など、期分けの節目で測ると、計画どおり伸びているかを確認できる。

まとめ

  • CMJは再現性が高く、現場に最初に入れる垂直跳びとして扱いやすい
  • 反動の深さ・腕の使い方・機器・試技数・タイミングをそろえて測り続ける
  • ジャンプ高だけでなく、左右差・RSI・コンディションの変化にも目を向ける
  • 1回の数値ではなく、その選手の推移として、期分けの節目で見る

CMJ単体で選手を評価しようとすると、どうしても見える範囲が狭くなる。体力テストの一種目として位置づけ、加速局面を映すスプリントタイムなど、性質の違う指標と並べて見るほうが判断を誤りにくい。

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