YoYoテスト/ビープテストで有酸素能力を測る|実施と記録の残し方
「ビープテストでレベル◯」という数字だけが独り歩きしていないだろうか。20mシャトルランとYo-Yoテストはどちらも音源のペースに合わせて往復走を繰り返すテストだが、測っている能力も、向いている競技も同じではない。この記事では、両者の違いと実施手順、記録の残し方を整理する。
ビープテスト(20mシャトルラン)とは
20m間隔で引いた2本のラインの間を、音源から流れるビープ音のペースに合わせて往復するテストだ。ペースは一定間隔(レベル)ごとに少しずつ上がっていき、選手はビープ音が鳴るタイミングでラインに到達しなければならない。
終了の判定:ラインに間に合わない、または明らかに遅れた状態が2回連続した時点でその選手のテストは終了とする。1回の遅れは見逃してよいが、2回連続で未達なら止める、というルールを毎回同じ基準で運用することが結果の比較可能性を左右する。
記録するもの:到達したレベルとシャトル数(例:「レベル11-4」)、あるいは総走行距離。市販の換算表を使えばVO2max(最大酸素摂取量)の推定値を出すこともできるが、これはあくまで間接推定であり、ガス分析による実測値とは別物として扱う必要がある。
Yo-Yoテストとは
Yo-Yoテストもシャトルラン形式だが、ビープテストとの決定的な違いは往復の間に短い能動的休息(アクティブリカバリー)が挟まる点にある。20mを往復した後、10秒(Yo-Yo Intermittent Recovery Test)ないし5秒(Yo-Yo Intermittent Endurance Test)のジョグでの回復区間があり、その後また次のシャトルへ入る。
この「走って止まらず、短い休息を挟んでまた走る」構造が、サッカーやラグビーなど、ダッシュと減速・切り返し・歩行が繰り返される間欠性の高い競技の運動パターンに近い。連続走であるビープテストよりも、間欠的な高強度運動を繰り返す能力(間欠性持久力)を反映しやすいとされる理由はここにある。
Yo-Yo IR1とIR2の違い
- IR1(Level 1):低〜中強度から始まり、間欠性有酸素能力の回復力を主に評価する。導入しやすく、一般的なフィールドテストとして使われることが多い。
- IR2(Level 2):開始強度が高く、より短時間で高強度域に到達する。無酸素的な要素の寄与が大きくなり、すでに高い有酸素基盤を持つ選手の識別に向く。
どちらを使うかは、選手のレベルとテストの目的(基礎的な有酸素能力の把握か、高強度反復能力の細かい識別か)で決める。同じ選手群で年間を通じて比較するなら、途中でIR1とIR2を混在させないことが重要だ。
実施時の標準化
シャトルラン系のテストは形式がシンプルな分、条件のわずかな違いが結果に出やすい。継続比較するなら以下をそろえる。
- 音源とペース表:同じ音源ファイル・同じ再生機器を使う。スピーカーの遅延や音量差もペース感覚に影響する。
- コースの設置:20mの距離、ラインの位置、路面の滑りにくさを毎回同一にする。屋外なら風向きや路面の湿り気も記録しておく。
- 判定者の基準:「間に合っていない」をどこで判定するか、複数の測定者がいる場合は判定基準をすり合わせておく。
- 実施タイミング:ウォームアップの内容、直前のトレーニング負荷、実施する時間帯(朝か夕方か)。
- モチベーション:これらのテストは自己申告的な「限界まで追い込む」性質を持つため、声かけの有無や強度が選手のやる気に影響し、結果を左右しうる。声かけをするかどうかも毎回そろえる。
結果を読むときの注意点
VO2max換算値を絶対視しない
到達レベルからVO2maxを推定する換算式は複数存在し、式によって推定値が変わる。ラボでのガス分析による実測VO2maxと数値がずれることは珍しくない。継続的なモニタリングでは、推定VO2maxそのものより、同一選手の到達レベル・走行距離の推移を追うほうが実務的な意味を持つ。
「動機づけ依存」であることを踏まえる
シャトルラン系のテストは、選手自身が「もう無理」と判断するまで続く性質を持つ。同じ有酸素能力でも、その日の気持ちの入り方や集団でのテスト(周りに引っ張られる/流される)によって記録が変わりうる。単発の記録の良し悪しだけで能力を断定せず、複数回の推移で評価する。
競技特性に合わないテストを選ばない
間欠的な運動が主体の競技にビープテスト(連続走)だけを使うと、実際の運動要求とテストの負荷様式がずれる。逆に、持久系競技でYo-Yoテストだけを使うのも同様にずれが生じる。競技の運動構造に近い形式を選ぶことが、テスト結果を現場の判断に活かす前提になる。
記録の残し方
到達レベル・シャトル数・走行距離・(使うなら)推定VO2maxを、実施日・実施条件(音源バージョン、天候、路面、時間帯)とセットで記録に残す。単発の数値ではなく、シーズンを通じた推移として蓄積することで、準備期に積んだ有酸素基盤がどれだけ試合期まで保たれているか、あるいは疲労の蓄積で低下していないかを判断する材料になる。
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