年間計画をどう管理するか|紙・エクセル・専用ツールの違いと選び方
年間計画は、作った瞬間がピークになりやすい。
シーズン前に時間をかけて組み上げる。マクロを3つに分け、メゾサイクルを配列し、週の構成まで落とし込む。作り終えたときの完成度は高い。
そして2週目には、もう現実と合っていない。
練習試合が2つ増えた。主力が離脱した。テスト期間で1週間まるごと練習が飛んだ。計画は初週から崩れ始める。
問題は崩れることではない。崩れた計画を更新し続けられるかどうかだ。ここで効いてくるのが、計画をどの媒体に置いているか。作り方の話ではなく、置き場所の話だ。
この記事では、紙・エクセル・専用ツールという3つの選択肢を、更新・共有・引き継ぎという運用の観点から比較する。
判断基準は「作りやすさ」ではなく「直しやすさ」
媒体を選ぶとき、多くの人は作りやすさで比べる。だが実際に運用が破綻するのは、作るときではなく直すときだ。
だから見るべきは次の3つになる。
1. 更新 — 予定が変わったとき、何分で直せるか
2. 共有 — 選手やスタッフが、今の最新版を見られるか
3. 引き継ぎ — 担当が代わったとき、他人が理解して引き継げるか
この3つで見ると、それぞれの媒体の限界がはっきりする。
紙・ホワイトボード
向いているのは、短期・少人数・単一チーム。
強いのは一覧性だ。壁に貼った年間計画は、意識しなくても毎日目に入る。選手にも自然に共有される。この「見えている」という状態の価値は、実は軽視できない。
限界は更新にある。予定が変わるたびに書き直しになり、変更が多いシーズンでは手が止まる。 消して書き直すうちに、いつの間にか実態と違う計画が壁に貼られたままになる。
そして過去が残らない。去年の同じ時期に何をしていたかを参照できないので、シーズンをまたいだ改善が効かない。
エクセル・スプレッドシート
最も多く使われている形で、実際かなり優秀。
導入コストがゼロ、自由に列を足せる、計算できる、共有もできる。ここから始めるのは正しい選択だと思う。
限界が出るのは、次の3つの状況だ。
①複数チームを担当したとき
チームごとにファイルが分かれる。3チーム担当していれば3ファイル。今週どのチームが何期なのかを見るには、3つ開く必要がある。横断して見られないのがつらい。
②コンディションや測定と繋がらないとき
年間計画は「準備期」と言っているのに、選手の疲労が抜けていない。この不一致に気づくには、計画のファイルとコンディションのシートを並べて見る必要がある。別々のファイルに置いてあると、この照合が誰もやらない作業になる。
計画は、実際の選手の状態と突き合わせて初めて修正できる。分かれていると、計画が現実から離れていく。
③引き継ぎのとき
これが一番大きい。よくできたエクセルほど、作った人以外に触れない。 数式、条件付き書式、シート間参照。作った本人には自明でも、引き継いだ人は壊すのが怖くて触れなくなる。
そして翌年、新しい担当者が新しいファイルを一から作る。ここで蓄積が切れる。
専用ツール
向いているのは、更新頻度が高い・複数チーム・引き継ぎが発生する現場。
計画とコンディションと測定が同じ選手に紐づいていれば、「準備期のはずなのに疲労が高い」がその場で見える。照合という作業自体が消える。
構造が決まっているので引き継ぎもしやすい。担当者が代わっても、データの置き場所と見方が変わらない。
一方で万能ではない。自由度はエクセルに劣る。そのツールが想定していない項目は基本的に増やせないし、独自の運用に合わせて構造を曲げることもできない。月額のコストもかかる。
導入する価値があるのは、「自由に作れること」より「毎回同じ形で残ること」が重要になった段階だ。
3つの比較
| | 更新 | 共有 | 引き継ぎ | 過去の蓄積 |
|---|---|---|---|---|
| 紙・ホワイトボード | 弱い | 強い(貼れば見える) | 弱い | ほぼ残らない |
| エクセル | 中 | 中(最新版の管理が要る) | 弱い(属人化しやすい) | ファイルが分かれる |
| 専用ツール | 強い | 強い | 強い | 残る |
紙が劣っているという話ではない。更新が少なく、1チームだけで、引き継ぎの予定もないなら、壁に貼るのが一番いい。 条件が変わったときに、その媒体では無理が出るというだけだ。
乗り換えを考える分岐点
経験上、エクセルで無理が出始めるのは次のどれかに当てはまったときだ。
- 担当チームが2つ以上になった
- 計画とコンディションを毎週突き合わせるようになった
- 来年、自分以外の誰かが引き継ぐ可能性が出てきた
- 去年と今年を比較したくなった
どれも「規模が大きくなった」ではなく、運用の性質が変わったという話だ。人数が増えたかどうかより、こちらのほうが判断材料になる。
逆に、1チームだけを自分ひとりで見ていて、引き継ぎの予定もないなら、エクセルのままで十分に回る。無理に変える必要はない。
まとめ
- 媒体は「作りやすさ」ではなく「直しやすさ」で選ぶ
- 見る観点は更新・共有・引き継ぎの3つ
- 紙は一覧性が強いが、更新に弱く、過去が残らない
- エクセルは優秀だが、複数チーム・他データとの照合・引き継ぎで限界が出る
- よくできたエクセルほど属人化する。ここが最大の落とし穴
- 分岐点は規模ではなく運用の性質が変わったかどうか
まずは今の計画がどこに置いてあり、来年それを自分以外が読めるかを確認するところからでいい。読めないなら、媒体を変えるかどうかは別として、そこは直しておいたほうがいい。
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